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僕の名は葉加瀬博士(はかせ ひろし)
父は世界的に有名なロボット工学の先生だった
僕たちの生活に狂いが生じたきっかけは10年前まで遡る
それは母の死だった
僕はその当時まだ〇歳だったこもあり、母のことはよく覚えていない
しかし、父は母(父にとっては妻)を亡くしたことで、それまで以上に研究に没頭し、ほとんど家に帰って来なくなった
そんな僕を心配してくれたのがアメリカにいる父の親友で米国某州立大学の教授をしていた方で、僕は数年を異国の地で過ごすことになった
そして、小学校を卒業する年齢になる頃、父に呼び戻されて、父の研究を手伝うことになった
おじさん(アメリカにいる父の親友)の教育や父の手伝いをしていたことで、僕の学力は同年代の学校に通う児童とは比べ物にならないほどになり、そのおかげもあって、去年念願の大検(大学入学資格検定;2004(平成16)年廃止、現在は「高等学校卒業程度認定試験(高認)」)に無事合格した
これで18歳になるまでは学校に行かなくて済むし、父の研究の手伝いに集中できる
父の研究
それは、「愛する妻(僕にとっては母)を復活させる」ことだった
勿論、死んだ人間を蘇らせるなんてことは父といえども不可能なことだ
要するに、「母そっくりのロボットを作ろう」というものだった
そんな父の苦労の甲斐もあって、完成も間近に迫ったある日、積年の過労が重なり、父はあっけなくこの世を去った
それが先月のこと
僕は父の遺志を継ぎ、自力のみで“母”の復活に尽力することになった
父は生前、彼女(開発中のセクサロイド)のことを、
“Production No(製造番号).SA-01”
“Code Name315”
と呼んでいて、完成した暁にはコードネームと母の名に因んで、「彩子(さいこ)」と名付けるつもりでいたらしいが、僕は、
Mechanical Organized humanic-Machine(機械式自律型アンドロイド)
略して、“MOM”と呼ぶことにした