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北上さんは元オカルト研究部の部長で、僕の大切な先輩だった。彼女は大学に進学も決まり、部活も引退して以前のように顔を合わせる機会もなく、胸に穴が開いたような毎日が続いていた。…そう、気付いてしまった。僕の中で先輩の存在がいかに大きなものだったか。思えば人付き合いが得意ではなかった僕を気にかけてくれて、何かと話を聞いてくれたのは彼女が初めてだった。他人と話すことは決して怖くない。関心を向けられることで相手にも関心を持つことができることもある。ただニコニコして話を聞いてくれるだけで、心は安らげる。そうやって話したりいじられたりしているうちに、いつしか他人とうまく関われるようになっていた。部長という大役を任されるまでになったのも全部先輩のおかげだと思う。「あたしがすごいんじゃないよ。キミはもともとそういう子だったってこと。経験が足りなくて、どう話せばいいかわかんなかっただけなんだってw…ほんじゃあとはよろしくね、新部長」なんか照れ臭そうに、そして感慨深そうに最後の部室を去っていくときの、彼女の笑顔が忘れられない。夏場の合宿、放課後のコックリさん、オカ研サミット。。。たくさんの思い出が今も逆に心を締め付ける。大きなイベントなんかなくとも、学校に行けば顔を会わせることができた。それは特別な日々ではない。しかし、まぎれもなくかけがえのない日々だったのである。「北上さんに会いたい」僕は校内をさがしまわった。そして、旧校舎脇の廃プールに入っていく先輩をみかけた。。。何かソワソワした様子の先輩…こんな寂れたところで何をしているんだろうか…「わっ…キミか…おどかさないでよね」「先輩、あの…こんなところで何してるんですか?」「あー…ちょっとね。ナイショ。キミこそこんなとこでなにしてるの?」「あ、あの…先輩がここに入ってくのが見えたから、それで…」「へー…追ってきたんだ…?」「えっ、あの…」図星を突かれると言葉が出なくなる。「アレでしょ?あたしに会いたかったんでしょ?なーんてww」再び突かれる図星。「そうですよ。先輩に会いたくて…さがしてたんです」「えっ…」自分でも驚いた。しばしの沈黙が流れていく。「あー…大井っちと約束してたんだった…」いとも簡単に距離を詰めてきた後輩に面食らった様子の先輩は、やがてこちらの真意に気が付いた様子で、そそくさとこの場を去ろうとしている。「待ってください先輩。俺…先輩の事が…」「…ダメだよ…あたしはそんないいもんじゃないよ」「えっ」「キミはいいやつだからさ…お姉さんにはちょっと、ね…」「な、なんですか!子供扱いしないでください!俺は本気なんですよ!」「あー、ゴメンよ…そういうつもりじゃなかったんだけど…」「…なんかあるんですか…?」「…………っ」何か言いかけて、先輩はかぶりをふる。「あたしはさ、そういうの…いいからさ…」「先輩…」「だからさ、キミはあたしなんかのことは忘れて、いい恋をするんだよ…?」「……」「でもね、気持ち、うれしかったよ。…ありがとね」「……」「この話はこれでおしまい。さ、行った行った」不自然にここから追い出そうとする先輩。「先輩、やっぱり何か隠してますね」「しつこいね、キミも…」と言いかけた先輩の顔色が変わった。「?」誰か来たのだろうか。その怯えたような視線は僕の後ろに送られていた。僕の後ろ。先輩の視線の先には、小太りの冴えない男が立っていた。エンブレムの色から察するに3年生だろう。「北上ー?コイツ誰だよ?」「あ?ってか、あんたこそ誰だよ?」反射的にとんでもない口の利き方をしてしまった。こんなイモにコイツ呼ばわりされる覚えはない。たとえ上級生だとしても。先輩をなれなれしく呼び捨てにしているのにも無性に腹が立った。「お、お前2年のくせになんだよその口の利き方は…」「……」そういえば先輩の知り合いか…あんまり荒事にするのも迷惑が掛かってしまうか…メンドクセー…軽く揉め事の空気を出している僕らの間に先輩が割って入る。「あー、後輩君ゴメンねー?ちょっと先約があってさ」「北上ー。コ、コイツ生意気じゃね?」「いいからー。んじゃそういうことだからさ、またねー?」ブーたれる豚を連れて、先輩は行ってしまった一世一代の告白も、なんだか手応えもなく釈然としないままに終わってしまった。「なんだよ、先約って…」一体あんな奴と何の約束があるっていうんだ…?やっぱりなにかがおかしい大井先輩と約束があるって口走ってなかったか?もちろん苦し紛れの感じもあったし、なんで最初から同級生なり友達なりと約束があると言わなかったのか。あいつが現れた時の先輩の顔は嬉しそうではなく、何かを恐れているようではなかったか…?でもそれはあくまで先輩の私生活だ。僕が干渉するのはおかしいのかもしれない。だがしかし僕は2人が消えた方向に歩き出した。。。さて、北上さん。オカルト研究会の部長という肩書を持つ、校内屈指の変わり者であります。その変わり者にまつわる奇妙な噂がございまして。。。「お金を払えば、えっちなお願いを聞いてくれる」というなんとも身も蓋もないモノでございます。事の始まりは、非常階段で北上さんが友人と談笑していた時の事です。偶然通りかかった男子生徒が、階段下から北上さんのスカートの中が見えることに気付いてしまいます。不意に転がり込んできた幸運に、男子生徒は興奮を抑えきれずに股間をふっくらさせてしまいます。あろうことか彼は、ここが学び舎であることも忘れ、ズボンのポケット越しに自身のリトルボーイを可愛がりはじめてしまうのでした。「こちらが深淵を覗いているとき、深淵もまたこちらを覗いているのだ」という超有名な言葉がある通り、北上さんもまた、下から覗いている不埒な男子学生の存在に気付いてしまいます。そのうちに女子たちのかしましいお話も終わり、解散となるのですが北上さんはその足で件の男子の許へと向かいます。やばい、気付かれたこちらに向かって階段を下りてくる北上さん。当然破廉恥な行為も実践していた訳ですから、騒がれでもしたら一巻の終わりでございます。男子学生からすれば、まるで生きた心地のしない時間が流れ、とうとう目の前に北上さんが到着してしまいます。もう駄目だ…男子学生は走馬灯をみたとかみなかったとか。しかし意外なことに。北上さんはあわてずさわがず手を差し出してきます。意図がわからない男子学生はキョトンとしています。「3000円でいいよー?」おっと。どうやらお金で解決してくれるというのでしょうか…?渡りに船。北上さんの寛大さに涙を流しながら男子学生はお金を支払ったといいます。彼女の気が変わらないうちにそそくさとその場を後にしようとしたのですが…そこでお話は終わると思いきや、なんと北上さん「まだでてないんでしょ?みててあげるから、だしちゃえばー?」階段に座り、ニヤニヤと挑発的な笑みを浮かべます。チラッとスカートをめくって見せ、脚を開いて反応を窺う仕草は、とても同世代とは思えなかったそうでございます。とても真っ当なシチュエーションではないのですが、それがまた性癖の扉をノックしてしまったようで男子学生はあえなく自らの手で射精してしまいます。俗に言う処の「見抜き」でございましょう。北上さんの面倒見の良さは、こんなところでも発揮されていたのですね(\'ω\')さて、こういった噂には戸を立てられないものでございまして…それからというもの、北上さんは結構な人数のオファーを受けることになります。話を聞きつけ、たくさんの男子学生が彼女に救いを求めました。主な戦場は旧校舎とその隣の廃プール、そして定番の体育倉庫です。今回後輩君が北上さんを見つけた廃プールは、まさに待ち合わせ場所だったのです。余談ではありますが、北上さんがお相手してくれるのは恋人がいない男子限定となっております。しかし厳密には「どの女子にも恋心を持たれていない男子生徒限定」であり、彼女にお相手してもらう=完膚なきまでにモテないという黄金の図式が図らずも出来上がってしまったのはナイショであります。これは彼女が独自の情報網を持っていて、校内の凡ての女子の恋愛事情を把握していることを意味しており、そういった嫉妬絡みのトラブルは事前に回避できているという裏付けでもあります。ただ、そんなヤリ手のような印象の北上さんですが、実際のところは「頼まれたら嫌といえない」「強く拒否できない」「面倒見がいい」「流されやすい」「実はそこそこエッチ」「揉め事が嫌」「相手に頓着がない」という性質の組み合わせであり、こんなことを繰り返しているうちには、それなりにひどい目にもあわされているようでございます。本音を言えば、気まぐれから始まってしまったこの連鎖を誰かに断ち切ってほしいというそんな気持ちがあるのかもしれません。後輩君の恋の行方はいかに?~怒涛のテキストで幕を開けた「衝動」第一話!~ご清聴、ありがとうございました(\'ω\')