皇帝陛下人質事件

黒陛下がテロリストの人質になってしまった。（デジャヴュ）国家元首たる皇帝陛下が人質になるなど、帝国の存亡にかかわる一大事だ。（強烈なデジャヴュ）テロリストたちは、黒陛下を人質にして埠頭の倉庫に立てこもり、帝国政府に対して要求を突き付けている。本来なら湾岸地域一帯は厳戒態勢となり、猫の子一匹通さないほど軍警が周辺地区を固め、各ビルの屋上では百発百中の狙撃班が待機しているはずだ。だが、そんな緊迫した気配は少しも無い。テレビ各局は報道特別番組など流していないし、テレビ東〇も頑としてアニメを放映している。念のため、またもや顔見知りのシークレットサービスに『ヤバいんじゃねーの？』と尋ねてみたが、彼も『いや、イロイロとその、ややこしいアレが…ああもうっ！聞くなよなーっ！？』と逆ギレするばかり。そもそも、テロリストが指名してきた交渉役が、皇宮警察でも宮廷武官でもなく、ただの居候に過ぎない『俺』だというのが、どう考えても一番おかしい。俺、国家意思決定に関する発言力なんてまったくねーぞ！？しかし、わざわざ俺を名指しして、交渉に応じなければ黒陛下の身の安全は保障しない、と言われてしまっては、真偽はともあれ断ろうにも断れない。まあ、そんなこんなで、凶悪なテロリストと対峙しているワケだが…Ａ「我々は国際軍艦解放戦線『赤い月の水平線』だ！貴様に要求を伝えよう。まず第一に、艦載機の熟練度を、実戦ならまだしも演習でまで削減しないこと！第二に、任務の受諾を手動でなく自動とし、条件をクリアしたなら自動的に達成とすること！それから…それから、あとはナンだった？」Ｂ「あとあと！進撃か撤退か決定するとき、大破中破とかの被害状況を確認できるようにすること！ダメコン搭載の有無なんかもチェックできると、さらに嬉しいです！」ううむ、なんと大胆な要求だ。とても俺の一存では決められない。だが、俺の返答次第で…黒陛下の命が！？…分かった。できうる限り前向きに善処するべく、関係各方面に検討を重ねるよう、対処する方向で議論をうながしたいと思う。（意訳・たぶんダメだと思うけど、とりあえずダメ元で言うだけ言ってみるわ。ダメならダメでカンベンな？）Ａ「承知した。それさえ聞ければ、もはや第二皇帝陛下に用は無い。では、さらばだ！！」Ｂ「それじゃあ、提督さん…あ、いえ、交渉人さんも、人質さんとお幸せにね～♡ばいば～い♡」ふう、なんとか無事に収まったか。しかし、覆面をしていたものの、あの乳のデカい正規空母と尻のデカい練習巡洋艦…どうも、どこかで見覚えがある。はたして他人の空似だろうか？黒「うえーん、恐かったよー！助けてくれてありがとー♡もう、死んじゃうかと思ったよー！？（棒）」ねえ、黒陛下？ちゃんと、俺の目を見て言ってくれます？まっすぐに、目をそらさないで？黒「…え？え？ええっ！？」俺、すっごく心配したんですよ？黒陛下にもしものコトがあったらどうしよう！？って。なのに、そんな俺に言わなきゃいけないコトは…それだけですか？黒「あ、あの、その…ううっ！卑怯よ！ズルいわよっ！？そんな目で見つめられたら、あたし！？あ、あたし！！…ああもうっ！そうよ！その通りよっ！！こんなのぜんぶお芝居よっ！？分かってるクセに、わざわざあたしの口から言わせんじゃないわよ！？この根性悪っ！！（逆ギレ）」それくらい、心配料だとでも思って下さいな。しかし、なんでまた黒陛下ともあろう御方が、こんなバカバカしいお芝居を仕組んだんですか？まあ、だいたい理由は、想像するまでもなく想像つきますけど？黒「お、お姉ちゃんが…バカ姉貴がっ！狂言誘拐でアンタ困らせたら、お姫様だっこでチューして慰めてくれたって幸せそうにノロケてて！！すっごくだらしないニヤケ顔でえへらえへら笑ってて！？そんなの、あたしだって…やらかしたくなるに決まってんじゃないっ！！お姫様だっこでラブラブしたくなるに決まってんじゃないっ！？ナニよ！？ナンか文句でもあるのっ！？（涙目うるうる）」ああもう！ウチの皇帝陛下はもう！姉妹そろってまったくもうっ！！俺を萌え殺す気ですかっ！？黒「だって！だって！アンタが誰彼かまわずモテモテなのが悪いんでしょっ！？あたしが一番の彼女で世界一大好きなんだったら、ちゃんと特別扱いしなさいよっ！！あたしコレでも、ママの娘よ！？好きで、好きで、大好きになったら！…他のコトなんか、一切合切どうでも良くなっちゃうんだからねっ！？（超逆ギレ）」はいはい、母娘ですねえ。そっくりですねえ。畏れながら、亡き先帝陛下のお気持ちが痛いほど分かりますよ。（実感）ああ、それと、母后陛下からのご伝言がありまして『軍警とSWATチームのイイ訓練になったし、あたしゃ優しい母親だからよ、小遣い一ヶ月ヌキで勘弁してやらぁ。帰ったら感謝の正拳突き、一万回な？』だそうです。良かったですねえ、寛大なご処置で？黒「うえー。アレ、またやらされんのー！？アレ、18時間もかかるから、正直カンベンしてほしいんだけどー！？」