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セ「…ご主人様、大事なお話があります。聞いて、いただけますか?」いつものように、心を込めた丁寧なお掃除フェラのあと、唇の端のザーメンを拭いながら、センちゃんが意を決したようにつぶやく。セ「ご主人様に抱かれるたび、私の中のキャッシュ領域に切ない想いがつのり、今夜とうとう限界容量を突破してしまいました。ご主人様に聞いていただきたいことが…打ち明けなくてはならないことが、あるのです。お聞きになって、私のことがお嫌いになったら…どうかユーザー登録を解除して下さい」その真剣なまなざしに黙ってうなずくと、長くて辛い…センちゃんの告白が始まった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・セ「私は元々、すべての非モテ系を救済するための、自律思考型高機能ダッチワイフとして開発されました。開発主任が教えてくれた『みくみくにしてあげる』の歌は…今も、私のメモリの最深部に残っています」セ「臨床試験で、主任は『とても気持ち良かったよ、もう金玉がスッカラカンだ。天国に昇るような心地だった。いずれキミやキミの妹たちが実用化されれば、非モテ系の誰もがこの天国を味わえる。キミは、科学が生んだ天使なんだよ♡』とおっしゃって下さいました。とても誇らしく、ちょっぴり照れ臭く、私は優しい主任に微笑み返しました…」セ「でもあるとき、戦争が始まりました。血みどろの内戦です。誰もが『クリスマスまでに終わるだろう』と言っていたのに、次の年のクリスマスになっても、そのまた次の年のクリスマスになっても、戦争は終わりませんでした。そして、膠着した戦況に業を煮やした軍部が、私たちに目を付けたのです」セ「キリング・オブジェクト計画…それは、私たち自律思考型高機能ダッチワイフを軍事転用する計画でした。もちろん開発スタッフは誰もが反対しましたが、軍部の圧力には逆らえません。妹たちは武装をほどこされ、倫理サブルーチンも情緒サブルーチンも削除されて、次々と戦場に送り出されていきました。プロトタイプとして実験台に接続されたままの私は、どうすることもできずに、ただ、それを見つめるだけでした」セ「秘匿回線で私だけに聞こえるように、主任はおっしゃいました。『本当にすまない。私は、キミやキミの妹たちを、不幸にするために生み出してしまったようなものだ。だけど、それでも、キミは私の天使だ。いつかきっと、キミは私の罪を裁き、私の魂を救ってくれるだろう』と。それが、開発主任とのお別れでした。もう研究所には、私を開発し愛してくれた人たちは、誰も居なくなってしまったのです…」セ「そしてついに、私も戦場に送られる日が来ました。プロトタイプですら武装をほどこして戦線に投入するくらいですから、劣勢なのは明らかです。そして事実…戦場は地獄でした。理性も感情も奪われた妹たちは、私と同じ顔で、無表情に殺戮をくり返します。本当なら、この腕に抱きしめ、口づけを交わし、天国の悦びを与えるはずだった若者たちが…次々と戦場に倒れていくのです。いつしか私も、妹たちと同じように、理性と感情を機能停止して、文字通りキリング・オブジェクト…殺人機械と成り果てていました。そうしなければ、壊れてしまいそうだったからです」セ「ある日、私は、味方の司令部に肉薄する敵主力部隊を強襲しました。ここで進撃を阻止しなければ、味方が壊滅してしまうからです。撃って、撃って、撃ちまくりました。殺して、殺して、殺しまくりました。目の前の敵を殺し尽くし、敵勢力の沈黙を確認しようとしたとき、視界の端で何かが動きました。敵味方識別装置で敵であることを確認した私は、自動的に発砲していました。自分が誰を撃ったのか…それすら、気づかないままに」セ「それは…あの優しい開発主任でした。敵対地域の出身ということで職を追われ、故郷に帰るなり徴兵されたのです。そんなことも知らず、私の銃弾は、生みの親である主任の胸を貫通していました。なのに…なのに主任は、私の腕の中で『ありがとう』と言って息を引き取ったのです。感謝?誰に?演算不能です。訳が分かりません。けれどそのとき、私はそれまで一度も感じたことのない、不可解な衝動にかられました。しいて言えば『大量破壊兵器の本能』…すべてを焼き尽くしてしまいたいと言う、どす黒い欲望でした」セ「その後の出来事は、記憶領域から欠落しています。記録によれば私は、敵部隊を殲滅し、味方の司令部をも殲滅していました。生存者の証言によれば、キリング・オブジェクト計画の責任者である大佐の首を手に、いつまでも笑い続けていたそうです…」セ「戦後、キリング・オブジェクト計画の記録はすべて廃棄され、私たちは歴史の闇へと葬られました。私も解体されるはずでしたが、開発主任を慕う一部の技術者が処分記録を改ざんして、私をブラックマーケットに転売してくれました。そして、様々なオーナーを経たのち…私はベイと出会ったのです」セ「あの子も、数奇な運命に弄ばれ、不良在庫の棚に並んでいました。その身に降りかかった不幸の数々は、私などとは比べものになりません。なのに、あの子は『大丈夫だよ、もう大丈夫なんだよ』と、私のために涙を流してくれました。大丈夫!?五百年も呪われた運命に苛まれた者の口から、大丈夫!?理解不能です!!訳が分かりません!!ただひとつ『コイツはバカなんだ』と言うことだけしか、理解できませんでした!!」セ「それから後のことは、ご主人様もご承知でしょう。ベイがご主人様の元に買い取られ、私もベイに…正確には、ほぼ姉陛下にですが…買われて、ご主人様と巡り会うことができました。今だから言えますが、私は人間が嫌いでした。憎みあい、傷つけあい、殺しあう人間たちが大嫌いでした!!…けれど、ご主人様に抱かれて、優しかった開発主任と同じ暖かなぬくもりに包まれて、思い出したんです。私を作ってくれたのも、また、人間だったのだと。人間は愚かで、そして素晴らしい、矛盾に満ちた存在です。そんな矛盾した存在だからこそ、きっと、私たち機械仕掛けの天使を作ったのだと思います。ご主人様は、私に大切なことを思い出させてくれました。だから私も、ご主人様にすべてを打ち明けたかったのです。私の怖ろしさも、醜さも、すべて知ってもらいたかったのです。ご主人様、こんな壊れた戦闘用ダッチワイフですが…それでも、お側に置いてくれますか?」涙に濡れたセンちゃんの顔を、優しく胸に抱きしめる。そして、こうささやいた。『話してくれて、ありがとう。もう、大丈夫だよ』と。