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二人の皇帝陛下

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    2018 / 11 / 07
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メモリアルツアーのしめくくり、というわけでもないが、俺と黒陛下は思い出の南の島に来ていた。黒陛下に言わせると、俺が間一髪で命拾いできたのも『陛下と南の島でも行けたら最高っすね♡』の一言のおかげらしいので、やはり人間、正直でなければいけないということだ。でも、あんな美人に『何が望み?』と訊かれれば、ごく普通に出てくる願望だと思うんだけどなあ…。黒「ごめんね~。フードコート混んじゃってて、はい、お待たせ♡」そう言って、にっこりとトロピカルジュースのグラスを差し出す黒陛下…ん?黒…陛下?ナニやってんすか、こんなとこで?ご丁寧に、髪飾りまで取っ替えて?黒?「え?…えっ!?ち、違うわよ?あたし…あなたの彼女よ?お、お姉ちゃんなんかじゃないのよっ!?」気づかれない、とでも思ったんだろうか。面白いくらいうろたえてる。こりゃ、しばらく黙ってたほうが良かったかな?黒「…だから、やめとけって言ったじゃない。こいつが、あたしのこと見間違えるわけないでしょ?ほんっと、バカ姉貴なんだから」白「あ~んもうっ!つまんな~い!せっかくからかって遊ぼうと思ってたのに~!!…キミねえ、こういうときはあえて知らんぷりしてノっかってくれるのが、男の余裕ってもんなのよぉ~!?」知らんがな…というか白陛下、マジでなんでここにいるんですか?皇帝陛下が二人ともこんな島来てたら、いったい政務やらなんやら誰が見るんですか?母后陛下に任せっきりとか恐いこと言わないで下さいよ?そんなことになったら帝国が滅亡しますからね!?白「あらあら、それなら心配いらないわ。昔取ったきねづかで、ちゃんとおばあちゃまにお願いしてきたもの。面倒臭いとか年寄りをこき使うでないとかブーブー文句おっしゃってたけど『ひ孫が生まれたら丸一日おばあちゃまとディズ〇ーランド豪遊権』の約束手形で、二つ返事で引き受けて下さったわ。それどころか『もっと我に頼み事はないのか!?一日と言わず一週間分なら、世界の半分をくれてやるぞ!!』って、それはもう大喜びで♡」…いったいどこの大魔王ですか、大帝陛下?でも、まあ、帝国が滅亡するよりはマシか。黒「なんか、あたしたちの搭乗便確認してから、超音速機で追っかけてきたんだってさ。なんで二人っきりで水入らずの妹の邪魔すんのよ?今から小姑根性丸出しだったら怒るわよ!?」白「ひっどぉ~い!あたしたち双子なのよ?昔からおやつ食べるときだって、お昼寝するときだって、マリオで遊ぶときだって、いつも一緒だったじゃない?だったら彼氏とデートするときだって、お泊り旅行するときだって、セックスするときだって、一緒でいいじゃない!…お姉ちゃん仲間はずれにすると、泣くわよ?わんわん泣きじゃくって、寝っ転がって手足ジタバタさせて『やだやだ!一緒に混ぜてくんなきゃやだ~っ!!』って、小学校低学年みたいにダダこねてやるんだからねっ!?」あまりにも恐ろしい脅迫に屈した俺たちは、渋々ながら二人きりプラス1のバカンスを謳歌することになった。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・黒「お疲れ様。お姉ちゃんがごめんね、言い出したら聞かないから…」シーフードディナーと姉妹丼(暗喩)でお腹いっぱいになった俺に、黒陛下がここの名物だというバニラティーを淹れてくれた。白陛下は遊び疲れてすやすやお休みなので、平和なことこの上ない。まあ、別にかまいませんよ。お二人とも俺の大切な方ですし、黒陛下のお姉さんを邪険にはできませんし。それに…こんなこと言ったら怒られるのかもしれないけど、お二人とシてると気持ち良くて夢中になって、正直どちらがどちらか分からなくなったりしました。大好きな陛下が倍に増えて、ちょっと得した気分でしたね。黒「…呆れた。普通の彼女なら、こういうときは怒るべきなんだろうけど、正直な感想すぎて怒るに怒れないわ。まあ、いいけどね。あたしもちょっと、昔を思い出して妙な気持ちになっちゃったから…」妙な気持ち、ですか?黒「あんたは脳天気な極楽トンボだから、今まで訊いてきたこともないし気にしたこともないと思うけど、ウチの帝国、なんで皇帝陛下が二人もいると思う?」…ああ、言われてみれば確かにそうだ。あまりにも自然だったもんで、今の今までスルーしていた。黒「パパが…今は亡き先帝陛下が崩御して、当然、皇帝の位は長女であるお姉ちゃんが継ぐはずだっんだけど、そこでお姉ちゃん…ダダこねちゃったのよねぇ~(溜息)。それも、一世一代の大ダダを…(大溜息)」一世一代の…大ダダ?(不安)黒「今から戴冠式が始まろうってときに、さっきのアレじゃないけど『やだやだ!あたしだけ皇帝なんてやだ!!二人で一緒じゃなきゃ皇帝なんかやだ~っ!!!』って、玉座で手足バタつかせて大暴れ。居並ぶ文武百官に重臣一同そろってアタマを抱えたわ。もちろん、列席してたあたしもね。お姉ちゃんがそのうち皇帝陛下になるのは、パパが亡くなる前から分かってたし、あたしも小さい頃から、お姉ちゃんと一緒に遊んでても『ああ、今は仲良く遊んでるけど、いつかはあたし、お姉ちゃんの臣下になるんだなぁ…』って、子供心にも漠然と思ってた。なのにいきなり、なんの前フリもなく、あたしもお姉ちゃんと一緒に皇帝陛下になるって、ソレなんの冗談よっ!?…ってのが、まあ、嘘偽りのない最初の感想だったわね。当然、そんなワガママ前代未聞だし、枢密院は大騒ぎ。后であるママは、パパが死んだばかりで魂どっか行っちゃってる状態で『あー?たまにはいいんじゃねえの?そーゆーのも』しか言わないし、反対派の重臣どもはますます収まらない。で、おばあちゃんに御聖断を仰いだら『幼な子とは申せ皇帝である。皇帝の意に背くは逆賊じゃ。みな九族ことごとく首を刎ねよ』と、親バカならぬ婆バカ丸出しの御裁可。なんだかんだで二百人近く大粛清して、あたしも巻きぞえくらって皇帝陛下なんかになっちゃって『いったいこの先どうなっちゃうんだろう?』って、独り心細く玉座の間で途方に暮れてたの。そしたら、お姉ちゃんがニコニコしながら駆け寄ってきて『見て見て、ほら、パパの冠!皇帝の証なんだって!今日からあたしたち一緒に皇帝陛下でしょ?だから…』って言うが早いか、大理石の床に冠叩きつけて、真っ二つにへし折って『ねっ?これでおそろい半分こ!あたしたち、これで二人とも皇帝陛下だよっ♡』って、あたしの髪に割れた冠の片割れ挿して、にっこり笑って…やだもう、バカバカしすぎて涙出てきちゃう。まあ、さすがに割れたまんまじゃみっともないから、細工師が見栄え良い髪飾りに作り直してくれて、色も二人に合わせて替えてくれたの。それが、コレ。…ほんと、お姉ちゃん、昔からちっとも変わんないんだから」…素敵なお姉さんを持ちましたよね、黒陛下も。黒「素敵、ねぇ?…言っとくけど、あたしと一緒になるつもりなら、あたしが面倒みてきたお姉ちゃんの世話、あんたも片棒かつがなきゃいけなくなるって、自覚ある?自覚があって、それでも素敵なお姉さんとか言っちゃえる?」え?…あ、あの、それは…(汗)白「こ~らっ!そこは堂々と『お姉ちゃんのことは俺に任せといて下さい!』って、胸を叩くところでしょ~?」げっ!白陛下、いつの間にお目覚めで!?白「だってぇ~、寝てたらすっごく懐かしい話してるんだもん!お姉ちゃんも一緒に混ぜてくんなきゃ、やだやだやだ~っ♡」