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ドラクルの娘

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    2018 / 11 / 26
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始「ちと、ベイを借りるぞ。隣町で美味い小料理屋を見つけたのじゃが、足しげく通うのも億劫でな。ベイに味を盗ませたい。かまわぬか?」もちろん、文句なんかあるはずない。むしろ大歓迎だ。朝昼晩、三度三度の美味しいごはんに加えて、美味い酒のツマミまで作ってもらえるなんて、こんなありがたいことはない。ベ「では旦那様、行ってきますね。おばあ様オススメの味、がんばって覚えてきますから♡」にっこりとベイちゃんが微笑む。ああ、ほんとにいい子だなあ。オナホにしとくのが惜しいくらいだ…。・・・・・・・・・・・・・・・・・暮れなずむ夕陽が、二人の影を長く伸ばす。川面を渡る風が、宵闇の近いことを告げている。始「…どうじゃな?こじんまりとはしておるが、なかなかの店であったろう?」ベ「ええ、酢味噌和えってあんなに美味しいものだったんですね、初めて知りました。それに、女将さんもとってもいい方で、親切にレシピまでメモらせてもらっちゃって。え?企業秘密なのにいいんですか!?って思っちゃいましたよ♡」始「あれだけ美味そうに食われては悪い気もするまいよ。泣きながら揚げ出し豆腐を食うやつなど、二千年生きておるが初めて見たわ」ベ「だってだって!ほんとに美味しくて涙が出ちゃったんですよ~!食べてくれる人への思いやりっていうか、愛情っていうのか…ああ、お料理って、こんなにも人を幸せな気持ちにできるものなんだなぁって思ったら、胸に何かこみ上げてきちゃって…あたしなんかまだまだですね。でもがんばります!丁寧に教えて下さった女将さんのためにも、がんばってあの味を再現してみせますからっ!!」始「善きかな善きかな。…さて、となればそちにも褒美をつかわさねばな。ほれ、駄賃じゃ。手を出せ…」そう言って、不老不死の真祖が、差し出された細くたおやかな薬指に指輪をはめる。古めかしい、ところどころ摩耗して飾り紋様もかすれ、紅く輝く神秘的な宝玉がはめ込まれた、指輪を。瞬間、一陣のつむじ風が二人の周りを駆け抜け、宝玉が熱をおびた紅い輝きを増す。ベ「お、おばあ様!…これは、いったい!?」始「うむ、見ての通り、竜珠の指輪よ。昔、竜どもを退治した折、恭順の証にと差し出されたものじゃが、そちにやる。我よりは…そちのほうが必要であろう?」べ「おばあ様は…やっぱり、何もかも、お見通しだったんですね…?」指輪をはめた手を胸の前で押さえ、翼を震わせながら紅い瞳の娘がうつむく。始「そちが竜種の裔であるなぞ、一目見れば分かる。おおかた、数代前か数十代前に酔狂な祖先でもおったのであろうよ…」幼な子を癒すように、真祖が一筋の涙が伝う頬を優しく撫でる。始「…とは申せ、数百年を経ての先祖返りなど子孫には迷惑なだけよ。竜種のいろはを教えてくれる者など誰もおらず、ただ闇雲に…吸血の飢えに怯えておったのじゃろう?幻想種たる竜には、浮世の糧など腹のたしにもならぬ。あやつらは、生きとし生けるものの根源の気を喰らうでな。じゃが、仙峡でもない浮世に左様なものが転がっておるはずもなし。せいぜい生き血にわずかな残りカスがあるばかりじゃ。そして、吸血の飢えに抗えなんだ竜種の裔は、ヴァンピールよ吸血鬼よと石もて追われる。なのにそちは、さらに辛い道を選んだ。生き血をすすれば命を奪う。ならばせめて人だけは殺めぬよう、生き血よりなお薄まった残りカスの搾りカスを、男どもの精に求めた。相違あるまい?心優しきドラクルの娘よ。しかも、ついにはそれすらも辛くなり、いっそ心を持たぬ…涙にくれることもなく、胸を掻きむしることもない、ただの『道具』に成り果てんとした。そちのようなかよわい娘を、そこまで追いつめようとは…つくづく天もむごい仕打ちをなさるものよ」胸が詰まって言葉が出ない。ただ、ぽろぽろと涙を流し、痛ましい嗚咽を漏らして吸血鬼の娘がうなずく。始「されど、その竜珠をもってすれば、そちの飢えはやわらぎ、手に負えなんだ力をも自在に使いこなせよう。孫らの色ぼけも多少は収まるはずじゃ。いかに生めよ増やせよと言うても、あれでは少々目の毒にすぎるでのう」真祖は励ますように優しく微笑み、指でくいと娘の顎をすくって、泣きはらした顔を上げさせる。前を向け、我を見よ、果てしなく広がる空を見上げてみよ…と言わんばかりに。始「半人前とはいえど、竜珠を得たそちはひとかどの竜種。常ならぬ力を得た者は、それ相応の責をも担わねばならぬ。それゆえ我は王朝を建て、民草が暮らす礎を築いた。そちは、どうする?何をもって、その力にふさわしき責を果たす?このまま…女中の真似事でもして過ごしたいか?」ベ「…あたしは、旦那様のオナホで、奥様のお料理の先生です。それだけで、幸せだと思ってました。こんなあたしでも必要としてくれる、優しい皆さんがここにはいらっしゃるんだって。でも、恐いとも、嫌だとも思ってました。そんな皆さんを傷つけてしまうかもしれない…あたしが。でも、もし、おばあ様からいただいたこの竜珠で…誰も傷つけることなく、皆さんのお役に立てるのであれば。あたしが本当になりたかったものに、なれるのであれば…」涙に濡れた紅い瞳に、生まれて初めての、決意にも似た力強い輝きがやどる。ベ「このヴラディスラウス・ドラクリヤ、陛下の王統をお護りする守護竜となりましょう。いついつまでもとこしえに、心からの忠誠をもってお血筋にお仕えいたします、我が大帝陛下…」ひざまずき、あたかも騎士の誓いを交わすように、竜の娘が真祖の手にうやうやしく口づける。始「大儀。…じゃが、とりたててそちに頼む用も思いつかぬ。孫らに美味い飯でも作ってやれ。それが何よりじゃ」ベ「…っ!はいっ!!今夜は…肉じゃがです!どうぞ、たくさん召し上がって下さいね♡」