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ファラオのお見合い

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    2019 / 03 / 05
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ラ「あ、起きた?おはよ♡はい、ナツメヤシとバナナとミルクのミックスジュース、目が覚めるわよ。ゆうべも3Pお疲れ様でした♡黒ちゃんは、朝イチの政務があるとかでもう出かけたわ。…ん、コレ、ことづかった伝言ね♡」ああ、目覚めのキスが裸エプロンってイイなあ。ラムちゃんは、良いお嫁さんになれそうだ。ラ「そっか、な?…ふふっ、意外と早く、そうなりそうだけどね。うん、思ってたよりも、ずっと早く…」…え?ラ「親からね、連絡があったのよ…『お見合いするから帰って来い』って」えええっ!?ラ「ナニ驚いてんのよ、失礼ね!私、これでも未婚のファラオよ?縁談なんか、腐るほどあるに決まってるでしょ!?」いや、そりゃ確かにそうだけど…それにしたって、ハナシがあまりに急すぎて。ラ「まあ、分かってたことよ。親にしてみれば、年頃の娘をいつまでも遊ばせとくワケにもいかないでしょ?誰か適当な花婿をあてがって、ちゃんと身を固めさせたい、できれば孫の顔も早く見てみたい。親なら、当然思うコトだわ。たとえソレが…ソロバンずくの政略結婚であっても、ね」…せ、政略結婚って?ラ「あのね、王家の婚姻っていうのは、私が結婚するんじゃないの。国が結婚するの。分かってる?エジプト第19王朝を司るファラオとして、私は、私のためじゃなく、国のために結婚しなくちゃならないの。誰でも好きな相手と好き勝手に結婚できる…あなたなんかとは、身分が違うのよ!」ラムちゃんは、俺に道理を説いているんじゃない。おそらく、自分に言い聞かせているんだろう。理不尽きわまりない、王家の道理を。それで、その…政略結婚ということは、相手が誰かも、もう分かってるの?ラ「うん、とある産油国の王子様でね。王位継承権は第二位だけど、石油相だから政治権力はあるわ。その気になれば、クーデターで兄の皇太子を倒すこともできるって、もっぱらの噂よ」王子様ねえ。石油相とかクーデターとか…確かに俺なんかとは、住む世界がぜんぜん違うわ。まあ、ラムちゃんを幸せにしてくれるんなら、とりあえず文句を言う筋合いじゃないけど。ラ「そうねえ。暴君と呼ばれるほどのバカでなし、さりとて名君と呼ばれるほどのお人好しでもなし。そういう意味では、いたって平々凡々な王子様…ってとこかしら?ただし、女癖の悪さは湾岸諸国に鳴り響いてるけどね。泣かせた女は両手じゃ足りない、堕ろした子供も片手じゃ足りない。女を、自分が気持ちよくなるための道具としか思ってない、典型的な人間のクズ…ってとこを除けば、顔もルックスもまあまあだし、なによりオイルマネーでお金持ちだし。政略結婚の相手としては、申し分ないんじゃないの?」な、なんだよソレ!それだけ分かってて、そんなヤツと結婚するって言うのかよっ!?ラ「何度も言わせないでよっ!私だって、そんなバカと結婚したくなんかないわよ!?だけど、結婚しなくちゃなんないの!それが、王家なんかに生まれちゃった、私の背負う運命なのっ!!」肩を震わせるラムちゃんの頬を、涙がひと筋こぼれる。ラ「…私ね、ちょっとした野望があったのよ。あなたと黒ちゃんが結婚したら、私も良いお婿さん見つけて、結婚式にはもちろんあなたも呼ぶの。素敵な花嫁衣装に身を包んで、太陽神ラーに結婚を誓う幸せそうな私を見て、あなたは思うの『ああ、早まった。逃がした魚は大きかった』ってね。…だけど、ちょっと無理かもね。私のほうが…先に結婚しちゃうかも。あは、あははっ…」悲しく笑うラムちゃんに何も言葉をかけられず、ただ、そっと抱きしめることしかできなかった。ラ「…ねえ、キスして。花嫁になる前に、最後に、本当に好きな人と…キスさせて」そして、ラムちゃんは、母国エジプトへと旅立って行った。胸が締めつけられたままの、俺を残して。・・・・・・・・・・・黒「ああもう、うっとうしいっ!!ウロウロウロウロ、動物園の白クマかなんかか、あんたはっ!?」ラムちゃんが去って一週間。俺は心ここにあらずでテレビを見て、新聞を読み、ネットを漁ってニュースをチェックしていた。探しているのはただひとつ、『ファラオ御成婚』の第一報だ。そうして、どこにも載っていないことを確認して、タバコを吹かし、コーヒーを飲む。この一週間、それだけしかしていなかった。居なくなって改めて、俺にとってラムちゃんが、どれほど大切な人だったかを思い知った。黒陛下の親友というだけではない、俺のセフレというだけではない。もっと大切な、かけがえのない女の子だったんだと、胸が裂けるほど思い知らされた。黒「…あんたね、まさか神にも等しいファラオが、一発ヤったくらいで自分のモノになるとでも思ってたの?そんなワケないでしょっ!?身分違いもいいとこよっ!!…だいたい、あんたにはあたしが居るじゃない!?皇帝陛下よ!?ファラオなんかに負けないわよ!!その皇帝陛下が、あんたのコト好きだって言ってんの!!結婚したいって言ってんの!!なんの不満があるっていうのよ!?さっさと忘れちゃいなさい!!あんなバカ女のことなんか!!」口下手すぎる、黒陛下の慰め。きっと誰よりも、ラムちゃんの縁談を腹立たしく思っているんだろう。同じ皇帝とファラオでありながら、自分は愛する恋人と婚約できたというのに、親友のラムちゃんは望まない結婚を強いられようとしている。それが何よりも、許せなかったんだろう。ラ「バカ女はないでしょ、バカ女は~?そんなコト言ってると、黒ちゃんだけお土産あげないからね~?」…え!?ラ「ただいま~♡いやー、春だってのにエジプトは暑いわ、日焼けするかと思った。あ、コレお土産の銘菓スフィンクス最中ね、うぐいす餡が最高なの♡みんなで食べて食べて~♡」え、え?ええっ!?…ら、ラムちゃん、なんで!?ラ「あれ?もしかして、ピラミッド饅頭のほうが良かった?でもアレ、三角だから、慣れないと食べづらいよ?」いやいやいや!そうじゃなくって!!結婚は?お見合いしたんじゃなかったの!?ラ「ん?あー。あんなモン破談よ、破談。いや、実はさ、あちらさんも縁談持ち上がってから、型通りの身辺調査してたみたいでさ。ネチネチ訊かれたのよ、彼氏さんのコト。自分のコトは棚に上げてね。で、やれ『不埒』だの『下賤』だのグダグダ言うもんだからさ~…思わず、黒ちゃん直伝のローリングソバットお見舞いしちゃったらもう、見事一発で破談よ、破談♡いやー、あの技、キレイに決まると気っ持ちイイねー♡」黒陛下とラムちゃんが、会心の笑みでハイタッチを交わす。うん、俺がずっと見たかった、笑顔だ。ラ「さすがに、惚れたオトコをクソミソに罵られて、引き下がったらファラオがすたるじゃない?お父さんとお母さんはアワアワしてたけど、国際電話でおじいちゃんに『そっだらマヌゲにがわええ孫はやれね』って助け船出してもらったら一件落着。まあ、戦争とまではいかないけど、報復関税とか石油禁輸ぐらいはあるかな~?ってトコで」ア「あのさ、ラムセスお姉ちゃん。そのバカの国、どこ?ちょっと機甲師団引き連れて、焼け野原にしてくるからさ」黒「ちょっと、ナニ言ってんのよ!?国民に罪は無いでしょ?やるんだったら、そのバカの乗った王室専用機、撃墜するだけにしときなさいよ」この子たちに軍の指揮権与えててイイのかなー。本当にイイのかなー?(汗)ラ「もう、やめやめ!あんなバカのコトなんか、思い出したくもないわ。今回のコトは黒歴史として、記録からいっさい抹消するの!傷ついた乙女心は…彼氏さん、あなたが癒してくれるんでしょ?」うん、おかえり…ラムちゃん。ラ「ええ、ただいま…」抱きしめ合って、ラムちゃんと長い長いキスを交わした。ふだんなら文句のひとつも言う黒陛下も、何も言わずに、俺たち二人を優しく見守ってくれていた。たぶん、きっと、黒陛下が…誰よりも嬉しかったからなんだと、思う。